学びのつぼ

遊びや暮らしの中で

好奇心引き出す契機に 

 行楽シーズンの到来です。新型コロナウイルスの感染対策に気を配りつつ、家族行事を計画されている方もおられるでしょう。そんな時間の中にも学びのヒントは隠れています。
 観光や外遊びで自然や歴史に触れることは、子どもの好奇心を引き出す大きなチャンスです。例えば紅葉狩り。野山を美しいと感じるのみならず、落葉樹の紅葉のメカニズムを知るきっかけになるでしょう。
 落ち葉は分解されて栄養分になり、雨水や雪解け水とともに海へ運ばれ、プランクトンを増やす。それが豊かな漁業資源を育んでいる―。こんなふうに森林と海の関わりへと話を広げてもいいですね。訪れた土地の風土に触れながら、子どもが理科や社会で学んでいる断片的な知識を大きくつないであげましょう。

 城や史跡、文化遺産を見学する機会もあるでしょう。「歴史の勉強は年表や人物名の暗記ばかり」と言って興味を示さない子でも、はっとする体験ができるかもしれません。
 それぞれの時代に生きた人たちの足跡や知恵が現代まで脈々と受け継がれていることに、子どもはきっと驚きます。目にする建造物が、コンピューターどころか電気もない時代に造られていることを知れば、人間の能力の無限性も感じられるでしょう。
 学校の勉強は知識を体系的に整理し、反復と継続によって定着させることが目的です。子どもが純粋に「面白い」と感じられるようなことばかりではありません。家庭での多彩な体験こそが、「なぜ勉強するのか」という問いへの答えを見つけ、学ぶ原動力を得るきっかけになるのです。
 日常生活にも、そんな場面はたくさんあります。スーパーに並んでいる200グラム900円の肉と500グラム1500円の肉、どちらが「高い」でしょうか。100グラム当たりの値段の計算は算数の「割合」に通じます。賞味期限と消費期限の違いは何か、どんなことに注意して買わなければならないか…。話題は尽きません。
 「読書好きの親の子は読書好きに。おしゃべり上手な親の子は、おしゃべり上手に」とよく言われます。つまり、子どもの学びの土台は家庭にあることを意味しています。わが子に勉強を好きになってもらうには、まず保護者が学ぶ姿勢を見せなければなりません。何げない日常の一こまを大切にしたいですね。

 

2020.10.19朝刊掲載

(転載に関しては中国新聞社の許諾を得ています)

 

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