学びのつぼ

音読のススメ

脳を活性化 有益な学習 

 「学校の音読の宿題って意味があるの?」。ある保護者からそんな質問を受けました。今回はそれにお答えしようと思います。
 毎日のように国語の教科書の音読を保護者が聞き、「○」や「△」の評価をサインするという宿題が出ていると思います。確かに子どもはただ読むだけ、親はそれを聞くだけ。それ以上の学習作業はなく、お忙しい保護者からすれば、その素朴な疑問も当然でしょう。
 実はこの音読、単調な作業に見えて、すごく脳を働かせているのです。普通、読む時に使うのは目だけですが、音読は目と口、耳という三つの器官を同時に働かせることになります。これが前頭前野という脳の中でも大事な機能を持つ場所をより刺激するようです。
 もちろん、ある程度の学年になれば、音読ができる環境も限られますし、黙読だけで事足ります。しかし、英語の学習ではどうでしょうか。音読なくして英語の上達はあり得ないことはお分かりだと思います。つまり、言語学習で脳を活性化させることは非常に有益なのです。
 また、特に低学年にとって音読は語彙(ごい)力の強化の面でも大変効果的です。「なぎなた読み(ぎなた読み)」をご存じでしょうか。ほとんど平仮名で書かれた文章は、例えば「きみはしらないの」は「君は知らないの」か「君走らないの」のどちらにでも読めます。そうなると、前後の文脈をしっかり理解して適切な単語を選択する必要が出てきます。
 幼児期から低学年は、日本語の文字を一つ一つ音声化することから始まります。次に単語を固まりとして捉え、さらにそれを意味の通る文章として理解していく過程に音読が効果的なのです。だから、学校の日々の宿題に出されているのだと思います。
 当院では4年生までに音読の指導を終えます。次のステップとして速読トレーニングを勧めています。文章を的確に速く読むという速読は、中学受験での国語の入試問題の文章量への対応力を養うという目的があります。そして、実は速く読むためのトレーニングは、その負荷が脳機能の向上を促し、読解力の向上にも効果を発揮しています。
 このように、黙読だけで文章を素早く理解できるようになるのは、最初に読み聞かせがあり、次に音読があってこそなのです。低学年での音読、絶対にお勧めです。

 

2019.10.7朝刊掲載

(転載に関しては中国新聞社の許諾を得ています)

 

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