学びのつぼ

中学受験

欠かせない家族の応援 

 今回のテーマは中学受験です。全く考えにない保護者や小学生の皆さんも多いと思いますが、実は広島県は全国でも有数の中学受験率の高い県なのです。伝統ある国立大の付属校や私立中高一貫校も多く、また近年は県立や市立の中高一貫校が複数設立された影響もあるでしょう。地域差はありますが、広島市内では「クラスの半数近くが受験をする」と驚くような話も保護者から聞きます。
 それでも中学受験は、やはり特別なことかもしれません。高校受験や大学受験の場合、受験生の周りには同じく受験を志す友人が多くいるはずです。しかし、小学6年生の場合、どれだけ受験率が高い学校でも、クラス内では受験しない友人の方が多数です。
 中学受験には、難関大への進学面での優位性や各学校の教育特色に魅力があると言えます。ただ、常に賛否両論が付きまといます。保護者がまず考えてしまうのは、進学後の学費や塾代などの経済的負担▽夜型生活になることでの発育への影響▽成績や合否結果などの心理的ストレス―などでしょうか。当たり前ですが、全員が志望校に合格できる受験はありませんから、慎重になるのは至極当然だと思います。
 いざ挑戦となれば、中学受験は「家族の受験」とも言われます。もちろん、親が教えたり一緒に勉強したりといった意味ではありません。受験本番の6年生になれば、意図せずとも家庭内が受験する子ども中心に回り始めます。まだ11~12歳ですから、順調に学習を進めるためには塾への送り迎えや食事といった生活面でのサポートが欠かせないのです。
 そして期待と不安が日々高まっていく中で、親子の喜怒哀楽の感情をいかに上手にコントロールできるか、親も学び続ける必要があります。これがまさに家族全員で取り組む、と言われるゆえんです。
 そこまでして中学受験をするべきなのか。一つのエピソードをお話ししましょう。当院では受験を終えた子どもに体験記を書いてもらいます。すると、ほぼ全ての子どもが、自分を支え応援してくれた家族への感謝を素直に表現します。この年齢でその気持ちを持てる。これが合否という結果を超え、子どもたちの成長を最も感じさせる点だと思います。12歳という年齢以上に大人に見える。中学受験という長い物語には、そんな瞬間もあるのです。

 

2019.9.2朝刊掲載

(転載に関しては中国新聞社の許諾を得ています)

 

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