学びのつぼ

家庭学習

時間の長さより「密度」を 

  新型コロナウイルス感染拡大を受けた長期休校で生じた空白を取り戻すため、夏休みが大幅に短縮され、学校行事の縮小や中止が相次いでいます。授業は例年より速いペースで進んでいるでしょう。文部科学省はさらに、授業不足を家庭学習で補う方針も示しています。
 これは宿題が多くなることを意味します。しかも授業の復習にとどまらない、自ら学びを進めていく内容です。自学自習は中高生には当然求められる力でも、小学生にとってはなかなかハードルの高い作業。家庭学習の差が、これまで以上に学力の差につながる可能性があります。
 では、わが子の学習状況をどう見守ればよいのでしょうか。家庭学習に必要な時間は「学年×10分」とよく言われます。ただ、低・中学年であれば10~40分。今と同じ分量の宿題をこなす程度にすぎません。最低限の目安と受け止めるべきです。
 高学年であれば1時間程度となりますが、放課後にどれだけ時間を確保できるかは家庭環境によって異なります。学習塾や習い事との兼ね合いもあるでしょう。そもそも、時間で学習の進み具合を判断するのは好ましくありません。
 学習で大切なのは「密度」です。集中力を高め、脳が活性化された状態で臨めば内容は充実し、効率よく進められるでしょう。その結果、学習時間が短くなったとしても、それは成果です。子どもは達成感を得られ、自信にもつながります。
 時間をただ費やすことが勉強だと勘違いしてしまった子どもは、できるだけ負荷がかからないよう、楽にこなそうとするでしょう。そんな悪習慣の中では身に付くものはわずか。保護者の皆さんも、「何分やったか」と時間の物差しに頼り、安心していてはいけないのです。
 その点、学校や塾の宿題は、時間ではなく「1日○ページ」「1日○問」などと分量で出されていて理にかなっています。まずは、それにしっかり取り組ませましょう。
 その繰り返しの中で、子どもはやがて、宿題の分量に対する所要時間を見通したり、省みたりできるようになります。時間を管理する力を身に付けると、宿題以外の自学自習も進められるようになるでしょう。そして「質×時間」の相乗効果が表れ、理想的な姿へと成長していきます。

 

2020.6.29朝刊掲載

(転載に関しては中国新聞社の許諾を得ています)

 

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