Theoria

第41回

深まる秋、とは言うものの、夏を思わせるような蒸し暑い日があったかと思う一方、朝晩の澄んだ風は確実に季節のうつろいを告げています。やはり秋は「目にはさやかに見えねども」なのかもしれません。
 この稿を書いている現在、我らが広島東洋カープが日本一へまっしぐらに突き進んでいます。選手たちの躍動もさることながら、何より驚かされるのは、テレビの画面を通じて聞こえてくる地鳴りのような歓声。球場を真っ赤に染めて、チームを後押しするその声援には圧倒されます。空席ばかりが目立つ旧広島市民球場時代を知るおじさんとしては、少々信じがたい光景でした。この号が発行される頃には結果も出ているはずですが、最高のフィナーレへ、今はただ祈るのみ。この季節までカープを応援できる幸せを噛みしめながら、どんな脚本家も書けないようなこの1年間の奇跡、その集大成をじっくり見届けることにいたしましょう。
 「今年は広島の年」―相手チームの監督がそう言っただけでなく、様々な場面でそんな言葉をよく聞きます。言われてみれば確かにオバマ米大統領の広島訪問に始まり、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでの郷土勢の活躍など、話題には事欠かない一年でした。そこに旧態依然とした中央集権的な枠組みへのアンチテーゼを感じつつ、それに対して胸のどこかで誇らしさも感じている自分は、ああやっぱり田舎者なのだなと痛感します。
 温暖な気候と豊かな自然に恵まれた土地に住む広島県人は、楽天的で陽気な「ラテン系」気質を持つと言われます。古くから中四国地方の中核を担ってきたという郷土愛が強く、熱血漢で行動力があり、進取の気風に富んでいることは県の産業を見ても明らかです。広島県の各地域はで独自の産業構造を築いています。これらの地域では「筆」「針」「家具」など、現在でもトップシェアを誇る伝統的産業と、新しい発想による技術改良や新産業などが融合して、多様な工業が発展してきました。これらの発展を支えてきたもの―それは、「部品調達」から「異業種での共同技術開発」までを可能にする、企業や研究機関のネットワークであり,高度な技術が蓄積された重層な産業構造だと言えるからです。
 ただし広島県人は「熱しやすく冷めやすい」とも言われます。「広島の年」はこの年限り、と言われないように、カープの黄金時代到来を願わずにはいられません。 

by テオリア編集長Y.O